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2005/02/10

NHK「フリーター漂流」をみて 前編

 ※この記事のつづきはこちら
 ※2008.6.11.秋葉原通り魔事件によせての追加記事はこちら

先日、NHKのドキュメンタリー「フリーター漂流」をみた。感想を書く。
北海道出身のフリーター3人の話が中心。彼らは、全国展開する請負会社の手によって、北関東で携帯電話の部品を製造する工場へ送り込まれる。

請負会社?人材派遣会社じゃないの?と思うかも知れないけど、この請負会社ってのが凄い。人材派遣会社の場合、そこから派遣された「人材」は、諸々の法的(?)規制でもって、派遣先においてもある程度は「人材」としての扱いを受ける権利があるらしい。でも、請負会社ってのは違う。会社は、お客である工場などから、その工場内での一定量の作業を請け負う。でもって、自分のところで雇ったフリーターたちをチームに編成して工場へ出向き、請け負った仕事(もちろん熟練の不要な単純作業)を短期でこなす、という仕組み。したがって工場側は、そのフリーターたちの身分やら待遇やらに関して何の責任も負わないですむ。工場側とフリーターたちとの間は何の契約関係もないんだから。

で、フリーターたちは工場へ行って一日中黙々と単純作業を行う。ところが次の朝、また工場へ行くと、何の予告もなく、その場で突然チームが解体され、別々の工場へ行って新しい仕事につくよう言い渡される。工場側の説明によると、急に部品の受注が減ったため、昨日までの作業は不要になったからとのこと。フリーターたちは、せっかく仕事の要領も覚えたことだし、できることなら自分たちを同じ工場になるべく固定して欲しい、と請負会社に訴えるが、まったく無視される。請負会社はお客である工場側からの要求を最大限優先して受け入れることにしているからだ。そうしないと工場側からの請負仕事の発注が無くなるのだろう。このような場面で何の文句も言わないのが請負会社のウリだそうだ。市場の状況に即応するかたちで、こうした急な配置転換が無造作に繰り返されていく。

昨日までに覚えた仕事は新しい工場では何の役にも立たない。あちこちの工場・作業場をたらいまわしされるフリーターたちが仕事を通じて個人の能力を高めることなどは望むべくもない。かわりに忍耐力と健康とをすり減らした彼ら彼女らの少なからぬ部分は、数ヶ月間の短期雇用期間をまっとうすることなく脱落する。その穴は全国からかき集められてきたフリーターによってすぐに埋められていく。

請負会社の人は、自分たちの会社は「社会のために貢献している。」と胸を張っていた。現在の工場はコストダウンのため市場の動向に機敏に対応する必要がある。だから、突然たくさんの人員が必要になったり、逆に不必要になったりすると。そうした工場のために請負会社は頑張っているんだそうだ。前線で「弾」が必要になっているところへすぐさま「弾」を送り込んでいくのが自分たちの務めだと。この「弾」って言葉は月並みな言葉だが生々しかった。請負会社の顧客である工場が勝利をおさめるための弾薬の補給。請負会社にとってフリーターたちはまったくの消耗品なのだろう。こうやって請負会社は「社会」に貢献しているという。

フリーターたちの給与は時給。体調を崩して仕事を休んだりすると、そのまま収入は消える。賃貸アパートを借り上げた「社宅」住まいの彼らの手取りは、給与から家賃や光熱費を差し引いた額である。アテにしていた残業が工場の都合でなくなり、その上、体調を崩して何日か仕事を休んだフリーターの、その月の手取りがわずか数万円となってしまい呆然としている姿が印象に残った。

こうした請負会社のやり方に対して、「この業態にも立法・行政の規制が必要なように感じました。」という佐藤晶さんの意見に深く共感する。

朝から晩まで、文字通り機械のように携帯電話の部品取り付けを繰り返す。さらに夜間までの残業を希望し、やっと十数万円の月収を手にする。

今の若い人はきつい仕事嫌うからフリーターが増えるんだ、なんて誰が言うのか。
こういった「弾」を使い捨てることで利益をあげていくのを誰が経営手腕と呼ぶのか。
全国各地の製造現場を漂流するフリーターは現在100万人にのぼるという。

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コメント

トラックバック有難うございます。「歴史文化村どっとこむ」の方も拝見しました。そういえば姉の嫁ぎ先が心斎橋で「中尾書店」という江戸期の古書籍屋を営んでいるんですが、義父の話を聞くとトレジャー・ハンターみたいで面白いです。(歴史研究者の方々も面白くも大変だろうと思います。)またチョクチョクあちらのサイトも覗かせていただきますね。

投稿: 佐藤晶 | 2005/02/13 13:03

たしかに歴史やってるとトレジャーハンターの気分があじわえます。偶然、すごい史料みつけると興奮。あるいは、自分が見当つけた場所を調査してて狙いどおり史料がみつかるとニンマリ。それはともかく、佐藤さんのお仕事、興味深いです。
自分のように“斜陽産業”の周縁にいるフリーターにとっては、この先、どうやって自分の生きる場所、働く場所を獲得するか、さらには、どういう働き方を見いだしていくか、切実な問題です。

投稿: 小林信也 | 2005/02/14 11:37

 はじめまして。渡邊大門と申します。戦国史研究のページ(ブログ)を運営しています。高尾さまのブログを頼って、こちらのページに参りました。恐れ入りますが、リンクをさせていただきました。よろしくお願い申しあげます。私のブログにもコメントを寄せていただけると幸いです。では失礼します。

投稿: 渡邊大門 | 2005/02/14 20:00

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