お江戸日本橋と都市景観
日本橋の景観を取り戻せ!?
今、東京都心は、あっちもこっちも都市再開発事業の花盛りみたいだ。
たとえば、東京駅の西では、三菱地所が、自分の庭である丸の内のリニューアルにいそしんでいる。一方、駅の東、日本橋を中心とする地域では、三井不動産がとても元気。日本橋三越の隣にある三井本館のそのまた隣には、高層の三井タワーが出現した。
この日本橋地区において、地域再活性化の目玉になる可能性ががぜん高まってきたのが、日本橋周辺の景観再生である。
みにくい景観?
現在の日本橋は、橋の上を覆うように、首都高速の高架が走っている。この風景(ここやここをご覧下さい)は、しばしば、現代日本の、みにくい都市景観の代表例として扱われてきた。歴史と伝統のお江戸日本橋を、経済効率優先の象徴ともいえる首都高が押しつぶさんとしている、という図式だと説明されると、なるほど、誰にでも分かりやすい。
そこで検討されているのが、日本橋川筋区域の首都高の高架を撤去しようという計画である。高架を撤去された首都高はどうなるか、というと、地下に潜らせるとか、あるいは、川沿いに連築したビルの内部を貫通させるとかいった代替策が出されているらしい。
無駄なんじゃなかろうか?
なんで今更そんな大工事が必要なのか、私にはまるで理解できない。高架を取り去ったからといって、「歴史と伝統」の日本橋の景観が復活するわけでもなかろうに。
疑う人は、日本橋三越前あたりに立ってみて、目の前に掌をかざし、首都高の高架部分だけを視界から隠してみればいい(実際、この前、私はやってみた)。そこにあるのは別に珍しくもない、川岸いっぱいまでビルが建てこみ、道には車があふれているといった、どこにでもある日本の都市の風景だ。
あるいは、日本橋の上まで行って頭上を見上げる。そこで一瞬目を閉じて、そこに高架が無い状態を想像してみるといい(これも実際やってみた)。両岸のビルの間に、狭い空が見えるだけのことだ。仮に、その空に見とれることができたからといって、あまり長い間、頭上ばかりを見つづけない方がいい。うっかりよろよろと歩道をはみ出して、橋の上をビュンビュンと通過する自動車にはねられてしまっては馬鹿らしいから。
そんな「景観再生」とやらに何千億以上の金を浪費するのは、やっぱり止した方がいいよ。
半分皮肉で提案するけど、どうせ金を使うなら、今の日本橋を壊して、江戸時代みたいな木でできた日本橋を復元してみたら?首都高の高架からは照明をあてて夜間はライトアップしたら、さぞかしきれいだろう。どこぞの博物館のレプリカよりは見ごたえがあると思う。もちろん、車は進入禁止。で、この橋周辺を、江戸時代っぽく、テーマパーク風の整備をする。日光なんとか村よりはかなりいいセンいくんじゃないかな。観光の目玉としては、そこそこ使えるんじゃなかろうか。
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コメント
同感です。
当時の風景は再生できないのですから。
安易な発想で壊れた景観は多いですよね。
投稿: あさくらゆう | 2005/11/18 06:39
あさくらさん、コメントありがとうございます。
「景観」とか「環境」とかいったキーワードを振りかざされると、なかなか文句がつけにくい、といった昨今の状況に疑問を感じています。
問題の日本橋の「景観再生」事業についても、それを批判する声が少なすぎるかなと思います。唯一めだつのは、この事業は、かたちを変えたハコモノ行政だ、と批判する、建築家の五十嵐太郎さんぐらいでしょうか。
近いうちに、この件については、私もこのブログで追加記事を書いてみようと思います。
投稿: 小林 | 2005/11/18 13:07
私もこのまま残しておくのが良いと思います。
昭和の都市政策の遺物として、パパゲーノ
投稿: papageno | 2006/06/10 00:28