お江戸日本橋と都市景観その5
日本橋再生運動の不思議
前の記事に書いたとおり、日本橋の再生運動を積極的に推進している人々の多くには、一方で、首都高の高架を撤去して日本橋の景観を復活させようと主張しつつ、もう一方では、日本橋の街並みの伝統的景観を大きく破壊する高層ビルの出現には反対しない、という不思議な矛盾がみられる。むしろ、それら高層ビルの誕生を喜び、今後、同様のビルが増えることを待ち望んでいる人も多いようである。
さらには、日本橋の景観を復活させるといいながら、日本中の、いや世界中のあちこちで増殖している、ありきたりの親水公園を、日本橋川筋にも複写しようというプランが歓迎されたりしている。言うまでもなく、歴史上、そのような公園が日本橋川に作られたことはない。この地にかつてなかった、没個性的景観の創出が計画されているわけだ。
これらの状況をひととおり考え合わせると、現在展開されている日本橋の再生運動の大筋は、日本橋周辺の歴史的景観を再生しようとするものではないことが分かる。
日本橋の何を再生したいの?
では、日本橋の再生運動とは、いったい、日本橋の何を再生しようという運動なのだろうか。
むろん、日本橋の再生運動に携わる多くの人々をひとくくりにして扱うことはできないであろう。各自、日本橋の何を再生しようとしているのか、意見の相違があるだろう。
ところで、この再生運動の推進主体のひとつに、地元住民や企業、関連するお役所などが官民一体となって作った組織があるようだ。そこで、こうした組織の広報などに示された見解やスタンスを素材に、この運動は日本橋の何を再生しようとしているのか、検討してみよう。(つづく)
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コメント
たまたま高さ制限で一定の高さのビルしか建てれなかったせいでそういう景観ができただけ。つまり日本橋の伝統的景観なんて銀座や新橋や神田と変わらない。
投稿: . | 2007/08/23 13:32
たしかに、きっかけは震災後の百尺規制なんでしょう。それでも、その後は、巨大な屋上広告を控えるだとかして、それなりに景観には配慮してきたんだとは思います。結果、ある一時期、日本橋や銀座の景観には一定の特色が存在していたのではないでしょうか。個人的には、新橋や神田の方が居心地良いですが。
投稿: 小林 | 2007/08/24 09:56