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2006/02/16

お江戸日本橋の魅力とは? その11

「地域社会」への過大な期待

 「都市計画」やら「まちづくり」やらの「専門家」と称する人々がしばしば過大な楽観的期待を寄せる対象となっているのが、「地域住民」やら「市民」やらの存在である。ここでは、こうした存在をおおざっぱにまとめて、「地域社会」とでも呼ぶことにしよう。

排除する「地域社会」

 ところが、私たちがこうした「地域社会」の一員になるのはなかなか難しい。一言でいって、持たざる者はそこから排除される。
 
 何を持ってないと排除されるのか?それは、土地・家屋・商店の営業権・子供などである。

 だから、仮に結婚していたとしても、安アパートに暮らす子供のいないフリーターなどは、「地域社会」の一員になかなかなれない(そして、フリーター自身も、多くの場合、「地域社会」の一員などにはなりたがっていない)。

 土地・家屋や店を持っていなくても、子供がいて地域の小学校などに通っている間は、「学区」を単位とする「地域社会」にコミットする道が開かれるが、それは子供が成長するまでのほんの一時期である。

 さらに、これを持っていないと「地域社会」からはほぼ確実に排除されるであろうモノとして、日本国籍または有効なビザ、住民基本台帳法上の「住所」などを挙げることができる。
 ただし、これらのものは、それをもっていなければほぼ確実に排除の対象となるが、持っていたからといって「地域社会」の一員として認められるわけではない。先に挙げた、土地・家屋・店の権利・子供などを持つことが必要である。

賞味期限切れの「地域社会」幻想

 弱体化した「地域社会」の再生を図るには、「地域社会」に入る資格を持っているのに「地域社会」の一員として行動することには消極的な人々を口説いて、積極的な参加をうながせばよい、という牧歌的な時代が、かつてはあったのかもしれない。
 
 実際、今なおそうした幻想を抱いて「地域社会」の再生を主張し、その一方で、土日に働いて疲れたフリーターや外国人労働者が、やっと休めた平日の午後に小学校の通学路や公園へ迷い込んだりしたところを白い目でもって監視しろと、ポスターを貼りまくって呼びかける人たちもいる。あるいは、そんなフリーター風情が入居してくるような賃貸のワンルームアパートの建設には、「地域」一丸、体を張って反対するぞぉっていう人たちもいる。
 そんな賞味期限切れの「地域社会」に何かを期待しての「都市計画」や「まちづくり」は、そろそろ見直さなきゃいけないんじゃなかろうか。

多様性とディテールの景観

 取り組むべきは、新しいスタイルの「地域社会」を創ることだろう。日本橋「地域」や六本木ヒルズ「地域」においても根付く(あるいは首都圏の後背で「荒廃」する北関東各地などでも根付く)、新たな「地域社会」を。そんな「地域社会」に生きる多様な人々が各々コミットして産み出した都市景観には、本物の多様性とディテールの美しさが宿るんじゃないかと夢想する。

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コメント

ご無沙汰しております、ギエぽんです。

「地域社会」をめぐるアナクロな認識という観点は、非常に大きな衝撃を受けました。

私事を述べますが、僕が小学校時代を過ごしたのは千代田区でした。僕も含めて、同級生には公務員宿舎住まいが多く、幼稚園以来の「地付き」の輪の中になかなか溶け込むのが難しかったことを覚えています。地域のお祭りや縁日も、町内会のおじさんたちが張り切る一方で、僕にとってはどこか空々しいものだったようにも思えました(*それこそ「縁」が無かったといえるのかもしれません)。

「地域社会」に「重力」のようなものを感じて関心を持つ一方で、勉強するほどに「地域」を持たない自分(*九州人? 東京人?)をどう位置づけるべきか悩んでいたのですが、小林さんの出された観点に、これからを見通すヒントが生まれるのではないかと感じました。

長々と、失礼致しました。

投稿: ギエぽん | 2006/02/16 18:18

 ギエぽんさん、コメントありがとうございます。
 ギエぽんさんに対してはあらためて説明するまでもないことなのでしょうが、17世紀以降、日本の「地域社会」の基礎は、間違いなく、家業的な小経営にあったのでしょう。
 そして、20世紀になって量を増してきた労働者の世界でも、家業的小経営の価値観や倫理観の影響が強かったのが、日本社会の特徴だと思います。つまり、サラリーマンを擬似的に家業とする感覚です。
 例えば、父親が終身雇用サラリーマンの息子は父親と同等以上の学歴の獲得をまず目標とし、それによって父親と同等以上の年収の終身雇用サラリーマンとなってイエ(の生活水準)を引き継ぐことを理想とする。女性は献身的な妻としてママとして、つまり専業主婦として、夫と息子をささえてイエの持続発展に努力し、娘には、自分同様、イエを守る主婦となるように教育する。
 このようにして、本来の自営業者に加えて、中流サラリーマンなんかも包み込んだ、小経営と擬似的小経営とを基礎とする「地域社会」が、その賞味期間を保っていたのが、17世紀から20世紀までの間だったんだと思います。
 本来の家業的小経営である農家や商店が衰退し、サラリーマンを擬似的に家業とする幻想も色褪せつつある21世紀。「地域社会」はどのようなものになっていくのでしょうか。
 もし小経営の復権がありえないことならば、旧態のままの「地域社会」の復権もありえないと思います。
 景観は、そんな現在の「地域社会」のあり方(ないしはその不在)を写す鏡として、注意深く眺めていく必要があると思います。

投稿: 小林信也 | 2006/02/17 06:48

先日はありがとうございました。途中で用事ができて3人全員で…ということになっちゃいました。どうもすいませんでした。。

おととい札幌に帰還して、現在は実家のパソコンから書き込みしております。

あまり参考にならないと思いますが、僕も先生と同じように「都市景観」をブログに書いてみました。場所は「札幌中心部」です。
今回の先生の日記の着眼点から見て対照的なのは、札幌の「札幌駅周辺(北3条~北5条)」と「狸小路(南2条~南3条)」と考えました。

先生も北海道に来る機会があれば、ぜひ歩いてみてはいかがでしょうか。

投稿: イシザキ | 2006/02/23 10:17

先日はお疲れさま。ヒルズの方には同行できずに残念でした。
六本木ヒルズはともかくとしても、そのプロトタイプのアークヒルズの現況は、本当に興味深かったです。
札幌を対象とした社会学などの研究はあるのでしょうか?関心をもっています。札幌レポートの続編を楽しみにしてます。

投稿: 小林信也 | 2006/02/24 10:21

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