ヒルズ巡見を終えて その2
赤坂アークヒルズ編
赤坂アークヒルズは、森ビルが手がける都市街区再開発の第一弾。ヒルズシリーズの祖。1986年開業で、今年20周年を迎えたところ。森ビルのホームページの言葉を引用すれば、「成熟を重ねる森ビル都市再開発の原点」だそうだ。
オフィスタワーの低層部分には飲食店を中心とするショップが入居し、住宅棟・ホテル・コンサートホールがセットになっている。オープン当初は、東京で一番洗練された“街”としてもてはやされ、物見遊山の人も集まった。たしか、高視聴率を維持していた頃のニュース・ステーション(テレビ朝日)もここから全国に中継されていたと記憶する。
タクシーを降りてエスカレーターで上層に移動し、ヒルズ中央のカラヤン広場に移動する。ギリシャ・ローマ風?の列柱回廊の外に広がるカラヤン広場は、大きなアーチ式の屋根を備えている。小雨のふる巡見当日であったが、おかげでここは快適である。イルミネーションの輝く大きなクリスマスツリーも登場していた。
閑散
ただ、その広場には人がいない! 誰もいない。いや、ただひとり、散歩でもしているのかな、といったリラックスした普段着姿の中年男性がひとり、広場の端に作られたステージ周辺を歩いていたが、それ以外には誰もいない。しばらくしていると、住居棟の下層にある店に向かうグループが通った(その後、ヒルズ内を歩いていると、サントリーホールでコンサートでもあるらしく、ホールの入り口に20~30人の人だかりができていた)。
開業当時、大学のオーケストラに所属していた私は、このサントリーホールの演奏会に出たことがある。たしかオープン記念でその年だけはホール使用料が半額だったため、都内のあちこちの大学オケがここで演奏会をやった。その頃の広場は、コンサートに来た客だけでなく、大勢の人で賑わっていた。
今回巡見でアークヒルズを訪ねたのが休日・土曜の午後5時頃。多くのオフィスが開いている平日であれば、もっと人影は濃かったのかもしれない。とはいっても、その日はボーナス直後の土曜の夜。あまりに寂しすぎじゃなかろうか。少なくとも開業当初はこんなんじゃなかったぞ。
森ビルのトップが、どっかの週刊誌の対談で、新宿の高層ビル街は、面としての開発が出来ていないためビルとビルとが孤立しているなどと馬鹿にしまくっていたが、そっちの街路の方が、同じ曜日、同じ時間なら、アークヒルズよりずっと賑やかなのは確実だ。
森ビルいわく、アークヒルズの開発理念は、単なるビジネス街ではなく、「多彩な都市機能」を「ひとつの街の中に融合させた」、「文化発信」の空間を作ることにあるそうだ。
そうした「多彩な都市」として「成熟」を重ねてきたという森ビルの自画自賛と、無人の広場でツリーが寂しく無意味にピカピカしている姿との間には、かなりの隔たりがある。
広場を見終わってから、レストランなどが入ったフロアをめぐる。誰もお客のいない店。客が入っている店でも、せいぜい数人の客。
今年の初めにここを巡見したとき、フロアの入り口近くの壁に、「この奥、営業しています」といった手書きの張り紙がしてあったのを目にして絶句した。さすがにその張り紙はもう見当たらなかったが、グループで歩くわれわれに向けて店のスタッフが注ぐ期待の視線が痛い。
土日は休みにしている店もいくつかあって、そこはシャッターがおりちゃってる。どっかの駅前商店街に来たような気分だ。
地域活性化モデルの卵
ちょうど良い機会だから、この際、ここアークヒルズにおいて、森ビルは、沈滞した地域の再活性化の手法を鍛え上げてみてはどうだろうか?それがもし成功すれば、なかなか商品価値は高いんじゃないかなと思う。いずれ、それが六本木ヒルズでも役立つかもしれないしさ。
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コメント
お久しぶりです。
いつも興味深く拝見させていただいております。
ヒルズ巡見のレポート2編も、そうそう!と強く頷きながら読ませていただきました。(^^;
仕事帰りに、私も良くサントリーホールに行きます。
時間があれば、広場のベンチやオープンテラスのテーブル席に腰掛け、コンビニで仕入れたサンドイッチを頬張ったり読書しながら広場を眺めるのですが、そうですね~私を含めてホールが開場するまでの時間つぶしをする人で賑わうのが、せいぜいなのかもしれないですね。
オフィスビルで働いている人たちが広場でくつろいでいる姿は、時間帯もあるのでしょうが、見た事ありません。
日本では、ヨーロッパのような広場は、やっぱり無理なのでしょうか?
実は、今日は表参道へゆく予定なんです。
私も表参道ヒルズ、見学してこようと思います。
投稿: snow_drop | 2006/12/13 16:44
お立ち寄りいただきありがとうございます。
私も snow dropさんのブログ、読ませていただいています。須賀全集文庫化のニュースもそちらで知りました。買おうかな、と思いつつ、既に単行本で持っている分が多くてついつい買いそびれています。でもやっぱりちゃんと買ってきて、外出するカバンの中にはどれか一冊常備しておきたいとも思っています。
それはさておき、ヒルズの危うさは、年を追うごとにひしひしと感じられるようになりました。来年は、もうちょっとていねいに、この問題を考えてみたいと思っています。都市再開発事業における普遍的問題として。
ローマの広場のことを思い出します。ナヴォーナ広場やパンテオン前のロトンダ広場、カンポ・ディ・フィオーリ。いずれも夜に入っていちだんと賑わいを増す広場でした。
シエナのカンポを模したとも言われる都庁広場で、昔、座り込んで缶ビールを飲もうとしたら、たちまち警備員がすっ飛んできて排除されました。
次は表参道ヒルズの感想を書きます。またご笑覧くださいませ。
投稿: 小林信也 | 2006/12/13 23:33