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2007/05/09

都市景観・まちづくり~ドロイス・ハイデン

 都市景観、そして、まちづくり。この二つのテーマについては、このブログでもちょくちょく言及してきた。今年は、もう少しじっくりとこれらのテーマについて考えてみたいと思う。
 
 で、学ぶべき先行研究をいろいろと物色した結果、興味を持ったのは、アメリカのドロイス・ハイデンという人と、日本の蓑原敬という人。二人とも建築系の人だが、それぞれの都市の見方に共感して選んだ。
 二人を選んだ後で、それぞれの経歴を調べたら、これが面白かった。ハイデンは、最初、歴史学を研究し、それから建築学へと転身した人。蓑原も、最初、東大の教養学部でアメリカの地域研究をやった後、日大理工学部の建築に入り、そこを卒業してから、建設省や茨城県で都市計画などを担当した人。つまり、人文科学を経てから建築を学んだという点で二人は共通している。
 結局、歴史研究者の僕が選ぶと、こんな風になるんだな。

 それはさておき、まず、ドロイス・ハイデンの本について簡単に紹介しておこう。
ドロイス・ハイデン『場所の力-パブリック・ヒストリーとしての都市景観』(後藤春彦・篠田裕見・佐藤俊郎訳、学芸出版社、2002年)
 出版社による本書の紹介をみると、「バナキュラーな街並み、市井の人々の仕事や営みさえも、地域の人々にとって価値あるものであることが、日本でもようやく気付かれるようになってきた。(中略)本書は、「美観」「文化財」といった従来の枠組を超える「生活景」の価値をパブリック・ヒストリーという概念から説いた意欲的な試み」だという。
 では、「パブリック・ヒストリーとしての都市景観」、すなわち、都市景観としてのパブリック・ヒストリーとは、いったいどのようなものか。
 訳者の紹介によると、「彼女(ハイデン)が言う社会的な記憶とは労働者の歴史であり、民族や女性の歴史を意味する。特に、地域社会における悲痛な体験や敗北した闘争の歴史を含むものである。これらは、書物に記されたり、公園や広場の銅像となって表象される、強者や勝者、すなわちメジャーの歴史とは明らかに異なるもので、人々の口伝や街角の何気ない景観などのよってのみ伝えられる市井の人々のアイデンティティとも言えるものだろう」とのことである。
 ハイデンは、「私達アメリカ人は、自分達の言い分を社会に伝えてくれる代弁者を持たない圧倒的多数の人々、すなわち一般の労働者、すべての民族の女性、男性、子ども達の個々人の心に共振する歴史が刻み込まれた都市の歴史的かつ公共的な場所を手にすることができる」という希望を掲げている。

 少し前までは、某大学で、都市論という講義を担当していた。今も続けていたら、格好の素材として講義で取り上げられたのになぁ。まあ、今回も、ちょっとした講義ノートを作成するつもりで、書評に取り組んでみたい。
 そのなかで、本書の長所と弱点をクリアにしていきたいと思う。

 もう一人注目の蓑原敬については、また記事をあらためて紹介しよう。

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コメント

こんにちは
ハイデンの本、タイトルがいいですよね。つい買ってしまいましたが、積ん読で放置してあるので、書評に期待しております。

業務連絡ですが、講義で「江戸を歩く」の宣伝をしておきましたが、小林さんの昨年の受講生が何人か参加するようです。よろしく。僕は参加できるかちょっと微妙です。

投稿: so | 2007/05/09 15:07

ご宣伝、ありがとうございます。
昨年の受講生さんたちには、会うのが楽しみです。
soさんの授業を受けて、いちだんと成長していることでしょう。
ハイデンの本は、仮に都市史研究が実社会で役に立つとして、その役に立ち方のひとつの可能性なんだろうと思い、ちょっとまじめに読むことにしました。近いうちに記事をアップします。
もうひとりの蓑原さんの方は、私説「近世の終焉」がらみで興味を持っています。現代都市社会に対する現状認識は、蓑原さんと私とでほとんど共通しているみたいなのですが、重要な論点は“明日の可能性”をどう見出すのか、という点にあります。思うに、“明日の可能性”のヒントを、過去の都市社会においていくつか見出すことができるのではないかと。これも都市史研究の“役立ち方”のひとつになるかなと考えています。

投稿: 小林 | 2007/05/14 11:37

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