近世の終焉としての現在 8
Ⅱ.小経営の時代の終わり
④擬似小経営的サラリーマン
現在の日本社会において急速に消滅しつつあるものとして、これまで、農家と農村、個人商店と商店街を取り上げてきた。
今回は、もうひとつ、激減している(と思われる)ものを挙げてみよう。それは専業主婦のいるサラリーマン家庭である。
1980年、雇用労働者である男性(非正規雇用を含む)と結婚している34歳以下の女性のうち、64.2%が専業主婦であった。それが、2001年には、55.2%にまで低下している。
これをみると、激減とはいえないんじゃないの、と思うかもしれない。しかし、この割合は、結婚している女性に占める専業主婦率である。そもそも、近年、結婚しない女性が増加している。25歳から29歳までの女性の未婚率は、1980年が24%なのに対して2001年では54%と大幅に上昇。30歳から34歳までだと、9.1%から26.6%へと、これも急上昇している。ちなみに、2005年には、25歳から29歳までだと59%、30歳から34歳までだと32%で、現在、さらに急な上昇が続いている。
ところで、サラリーマンとは、普通、正社員の男性のことをいう。この記事で注目しているのも、正規雇用の男性労働者=サラリーマンがいる家庭についてである。この正社員男性の数も減少傾向にある。大卒直後に正社員として就職する率は、1992年で88.6%だったものが、2002年には66.7%へと低下。高卒の場合の低下はさらに著しく、1992年で64.8%だったものが、2002年には40.4%となっている。景気動向にかかわらず、産業構造の変化によって、この低下傾向は将来的にも続くという見方が有力だ。
以上のバラバラの統計を組み合わせて正確な結論を得るのは、たちまちは難しいが、おおざっぱにみれば、正社員の夫と専業主婦の妻とが作る家庭の数や比率は、現在、かなり急速に低下しているといっても構わないのではないか(ちょっと雑な話だけど・・・もっと適当な統計がみつかれば書き換えます)。
さらに条件を絞ると、この記事で特に注目しているのは、こうして減少しつつある正社員のなかでも、いわゆる日本型雇用のサラリーマンについてである。終身雇用・年功序列の日本型雇用システムの下で働くサラリーマンのことだ。最近、話題となっている、いずれ辞めることを前提に酷使されまくりの、使い捨て“名ばかり正社員”のことではない。
このような日本型雇用のサラリーマンの減少傾向を示す適当な数字も、すぐには見つからなくて恐縮だが、まあ、たぶん、これも減少しているといって間違いはないだろう。
つまり、現在の日本社会において急速に減りつつあるものとして、私が取り上げたいのは、日本型雇用のサラリーマンの夫と専業主婦の妻が作っている家庭なのである。
私は、このように、専業主婦を妻として自分が主たる家計支持者となっている日本型雇用のサラリーマンのことを、擬似小経営的サラリーマン、あるいは、家業的サラリーマンなどと呼びたいと思っている。そのように呼ぶことの理由は次回。(つづく)
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