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2008/08/06

大宮のリストランテ・ベネチア

 埼玉で美味しいイタリア料理店に行きたいんだけど?ってきかれたら、迷わず、大宮のリストランテ・ベネチアをおします。もちろん、埼玉のイタリア料理店をぜんぶ食べ歩いたわけじゃないけど、でも、ここが一番おすすめ。
 
 小川洋行さんがその大宮ベネチアの新シェフになられました。

 小川さんは、新任とはいえ、かつてはベネチアの厨房で修業された方。その後、笹塚の伝説的名店サルサズッカ(本当にすごいお店でした)のシェフをつとめられてから渡伊。帰国後、新宿住友ビルのリストランテ・ウノのシェフを経て、ベネチアへシェフとして戻ってこられました。

 小川さんの得意とするレパートリーのひとつが、イタリア中部、マルケ地方の料理です。マルケを代表する家庭料理として、ポタッキオがあります。ウサギや鳥類の素朴な煮込み料理ですが、小川さんは、その素朴な暖かさや味の深さをより活かすかたちで洗練した皿に仕上げてきました。このポタッキオ、サルサズッカの頃からのファンも多いですよね。小川さんが、働いていたマルケのリストランテでこれを出したところ、地元のマダムたちに大好評でレシピをせがまれたそうです。(素朴なままのレシピなら、こちらの記事を。)

 その昔、大宮ベネチアでは、中部イタリアのトスカーナ地方の料理を中心にして、それに南イタリアのシチリア料理がいくつか加わるというメニューがよく出されていたように記憶しています。例えば、ローストした鶏に豆料理とか。鰯を使ったパスタとか。それは、旧オーナーがシチリアで修業されていたことや、トスカーナのワイナリーと親交があったこと、厨房スタッフのイタリアでの料理研修の場がトスカーナだったりしたことなどが影響したのでしょう。
 
 その後、旧オーナーの息子さんの飯岡由多可シェフが、北イタリアの料理を得意とする某有名シェフの指導を受けたり、北イタリアのロンバルディーアやエミリア・ロマーニャなどの地方で修業されたことから、次第に、ベネチアのメニューは、北イタリアの料理が中心になったように思います。例えば、メインの付け合せも、かつてのレンズ豆にかわって、ポレンタなどがよく出るようになりました。店名に合ったヴェネト地方の料理も増えました。
 
 それが、今回、小川さんが新シェフとなることで、再び、中南部イタリアの料理中心へと回帰していくのかも。といっても、以前のようなトスカーナ料理メインではなく、マルケ地方や、前シェフの門平さんが得意とするアブルッツォ地方の料理なども加わった多彩な構成になるように思います。

 大宮ベネチアの料理の伝統的特徴は、比べるものがない完璧主義にあります。トマトソースひとつを作るにしても、麺をゆでるにしても、他のお店ではみられない手間をかけていました。旧オーナーがお店に注いでいた物心両面での莫大な愛情や飯岡シェフの料理への情熱が、そうした完璧主義を奇跡的に成り立たせていたのだと思います。おかげで、都内の名店でも絶対にあり得ない高いレベルの料理がたくさん楽しめました。例えば、白トリュフのリゾットなどは、単なる高級食材頼みのよくある色物料理(例えば、普通のリゾットに白トリュフのスライスを振っただけの皿とか)とはかけ離れた、まさに絶品の料理でした。

 飯岡シェフの下でベネチアの伝統を学ばれたこんどの小川シェフも、その完璧主義を受け継いでいます。そして、小川さんの完璧主義の特徴は、柔軟な完璧主義、とでも呼べるように思います。伝統を頑なに守るだけではなく、伝統の長所をしっかりとつかんだ上で、その長所をさらに活かすことを目的に(これみよがしなシェフの腕自慢が目的ではなく)大小の工夫を絶えず積み重ねられています。

 マルケの極めて素朴な家庭料理を、その素朴な暖かさをまったく減じることなく、リストランテ料理のレベルにまで高めた、得意料理のポタッキオ。これが、そんな小川さんの柔軟な完璧主義をよく表しています。この一皿だけでも食べに行く価値があると思いますよ。

 リストランテ・ベネチア 全18席の小さなお店ですから、予約していくのがおすすめです。048-643-2000

 写真は、先週行ったベネチアで食べた、ウサギのポタッキオ。うまかった!連れて行った子供たちにも大好評。そのあたりは元・家庭料理の本領発揮。でもって大人の舌も大満足。しっかりめの白ワインと合わせたくなりますPhoto
(その夜は赤を飲みましたが)。

 つけたし:小川シェフは、かつてベネチアでの修業の頃、しばしばドルチェ(デザート)も担当されていました。そんなこともあってか、小川さんのドルチェ、かなり美味いです。これまたおすすめ。

 2009.3.付記 ベネチアの元オーナーシェフの飯岡由多可さんは、今、中野富士見町のRabyというイタリア料理店でシェフをつとめていらっしゃいます。そちらでは、オープンキッチンで由多可さんの働く姿を見ながら食事が楽しめますよ。由多可さんファンの方は、Rabyへどうぞ。

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コメント

”地球最後に日に何が食べたい?”と聞かれれば”ベネチアの白トリュフのリゾット”と答えます。それほど、衝撃的なものでした。
新生ベネチアよさそうですね~。行きたいです。

投稿: ひろぱぱ | 2008/08/07 22:33

リストランテ・ベネチア
素敵なレストランですね
本格的なお料理たまりませんね

投稿: ryuji_s1 | 2008/08/08 08:27

ryujiさま
コメントありがとうございます。機会があれば、ベネチア、一度お試しを。

投稿: 小林 | 2008/08/10 11:15

ひろぱぱさん、たしかにあのリゾットは、文字通り絶品でした。私も、最後に何か一品、と言われたら、あれかなぁ。というか、またあれを食べられる日はくるんでしょうかねぇ。

投稿: 小林 | 2008/08/10 11:18

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