『信頼と安心の日本経済』
本の宣伝です。
岡村宗二編『信頼と安心の日本経済』(勁草書房、2008年6月)
バブル、デフレ、グローバリゼーション、構造改革、雇用問題、環境問題、資源問題といった喫緊の課題を、経済学の方法で分析して解決への指針をさぐる、という本です。そして、導入部と“まとめ”の他、11章の各章を通じて市場主義に対する問い直しがなされています。
経済学を教えていらっしゃる大学教員の他に、シンクタンクの研究員や官僚、民間のエコノミストの方々の論文を集めた本です。皆さん、経済学の専門家です。そこになぜか、歴史研究者の私が執筆者に加わって、第七章「江戸の格差社会と現代東京」を書きました。
本書を通じて、先にあげた現在の日本社会の諸課題について実証的に深く知ることができると同時に、現代社会を分析するツールとしての経済学の魅力にふれることができます。おそらく、あちこちの大学の経済学入門の講座などでテキストとして使用されることもあるでしょう。
そんななか、例外的に、私の章は、現代社会を分析するツールとして、歴史学、なかんずく日本近世史研究が有効であるということを、経済学の専門家や、経済学に興味をもつ人にわかってもらいたくて、そのことを隠れたテーマに据えて書きました。
私の場合、いくつもの大学を非常勤講師としてかけもちする日々ですが、歴史学以外の学問である、商学や経済学、法学などを学ぶ学生さんたちを相手に日本近世史の講義をする機会が大半です。そうしたなかで、常に「自分が教えている近世史が学生さんたちの役に立つのだろうか?」という問いを胸に抱いて講義をします。そんな講義のスタイルが反映したのが今回の文章だと思います。
内容は、このブログで最近書いている連載記事「近世史の終焉としての現在」(2008年5月以降)でおおざっぱに紹介したような問題意識を下地にして、昔書いた「私の研究は面白いですか?」10と「(同右)」12でまとめたかつての修士論文の骨子を、リライトしたものになっています。
まあ、そんな私の章はともかく、現在の日本社会の諸問題を、経済学の視点から、しっかりと捉えてみたいという人は、ぜひ読んでみてください。
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