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2009/03/12

近世の終焉としての現在 20  まとめ~その2

その2.小経営の時代の終わり
 
 今、私たちの目の前で終わろうとしている時代。それは小経営の時代とでも呼ぶべき時代である。

日本社会において、小経営の時代が本格的に始まったのは、17世紀前半のことだろう。それからおよそ400年を経た今、20世紀末から21世紀初頭において、小経営の時代は終焉を迎えようとしている。

 ここでいう小経営とは、農家や個人商店などの、家族労働を中心として維持されている、家業的な経営のことである。

 近世の日本社会においては、農家人口が総人口の80%を占めていたとされている。第二次大戦の前後では、これが40~50%にまで低下するが、それは総人口自体が増加しているからであり、実際のところ、おおむね3000万人といわれる農家人口の絶対数において、近世以来ほとんど減少はない。
 しかし、その後の高度成長期において、人口比と絶対数の両方の減少が始まり、その減少速度は近年ますます加速している。2006年においては、農家人口は約790万人で、総人口に占める割合は、わずか6.2%となった。 また、農業の就業人口の60%は65歳以上の高齢者が占めていて、今後、農家の減少速度はいっそう速まることが確実視されており、2025年の農家人口の総人口比は、2.7%となることが予測されている。
 統計を確認していないが、農業で生計を立てている(あるいは生計の足しにしている)いわゆる販売農家の割合も激減しているだろう。高齢の「農民」が、大部分の耕地を手放したり(放棄したり)あるいは宅地その他に転用しながら、わずかに残した耕地でもって、自家用の農作物、あるいは都市に出た息子・娘に送るための農作物を細々と栽培している、という、名ばかり「農家」がかなりの割合に達しているのではないか。
 こうして、私たちの日本社会から、伝統的な農家の姿はその大部分が消えようとしている。

 一方、家業的経営の商工業者も急速に減少している。その中のいわゆる個人商店(小売)の数についてみると、1958年には、全国小売店舗総数、約140万店舗のうち、実に90%を個人商店が占めていた。数にすると約126万店舗となる。まさに、小経営中心の小売業であった。その24年後の1982年では、店舗総数が約172万店舗に増加し、その中で個人商店が占める割合は約73%に低下するものの、店舗の数は約125万店舗で、個人商店の数自体は維持されている。しかし、2002年になると、店舗総数は約130万店舗に減少し、その中の個人商店は約55%で、数にすると約72万店舗である。なんと、この20年間で約53万店舗、42%以上も減少している。凄まじい減少である。そして、その後も減少の速度は増大する一方である(2004年から2007年のわずか3年間で13.4%も減少)。
 こうした個人商店の激減ぶりは、身の回りの商店街の様子をちょっと思い浮かべれば容易に実感できるだろう。

 近世の日本社会における「被支配階級の構成する基本的社会集団」は「村と町」であると朝尾直弘はいう。その村を構成していたのが小経営の農家で、これが日本の人口の大部分を占めていた。町を構成していたのが小経営の商工業者であった。
 これらの小経営が基本的社会集団を構成するという社会構造は、明治維新を経てもなお、一定の変化を見せつつも、存続していった。例えば、寄生地主にしたところで、こうした小経営の農家とそれらが構成する集落の存在を前提にしてはじめて成立するものであったことは言うまでもない。
 そして、今、20世紀末から21世紀初頭にかけて、これらの小経営のほとんどが姿を消そうとしている。

 このようにして、17世紀に始まった小経営の時代は、400年後の今、終焉の時を迎えているのである。

 次回は、日本型雇用の労働者とその家庭の“小経営性”と、その衰退について。

※今回のまとめ記事の内容について、詳しくは以下の過去記事を参照のこと。
農家と農村の消滅について
  近世の終焉としての現在 4
  近世の終焉としての現在 5
個人商店や商店街の消滅について
 近世の終焉としての現在 6
小経営の時代の終わりについてのまとめ記事
 近世の終焉としての現在 7

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