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2010/06/14

行きました。吉田光男『近世ソウル都市社会研究』書評会。

 先週出席した書評会の感想を少し。

 夕方、浜松町のアルバイト先を出て、書評会が開かれる大学へ向かう。たまたまだけど、その大学が私の出身大学。
 大学に着いて恩師の研究室を外から見ると灯りがついていたので、長らくのご無沙汰のお詫びに急遽訪問。そこで偶然、米国留学から帰って日本の大学に就職したばかりの若い友人も同席。紅茶をご馳走になり3人でしばし歓談。なつかしい。で、3人ともそのまま書評会へ。

 さて、書評会。評者は京都工芸繊維大学の石田潤一郎さん。他にコメンテーターとして、東京理科大学の伊藤裕久さんと東京大学の金銀眞さん。評者・コメンテーターともに、工学部の建築系の研究者の方々。とはいえ、人文系の研究者の立場からみても、そこで示された問題関心については、何の違和感もなく共有できる。
 そのような論点の共有状況は、書評会を主催した研究会組織や、その研究会設立の前提となった研究グループが、30年以上もの間、都市史の分野において、人文系と工学系のクロスオーバーを積み重ねた結果でもあるだろう。久しぶりに出席した研究会で、あらためてその有効性について感心。
 そんな研究環境のもとで研究をスタートさせた前出の若い友人やその同世代の人たちが、今後、きっと新たな都市研究のパラダイムを築いていくんだろう。

 書評会には、著者の吉田光男さんもご出席。時間が限られていて、評者・コメンテーターの質問に吉田さんが回答し、最後は、司会の指名で私の恩師が出した質問に応答があって、会はお開き。いずれも興味深い質疑応答だったが、自分が事前に抱いていたいくつかの疑問を発言する間も無く、それは残念だった。ただ、コメンテーターから出された、ソウルの鐘閣付近の店舗空間に関する議論は、私の研究テーマからしてとても興味深かった。とはいえ、要は、近世・近代初頭のソウルの商業空間の細部についてはまだほとんど何も解明されていないんだな、ってことがよくわかったという感じ。研究余地が広いのは良いことです。うんうん。

 吉田さんのご著書の白眉は、ソウルの戸籍の詳細な分析。その強い実証が基本にあってその上に展開される都市論だからこそ、人文系とか工学系とかいった枠を超えて惹きつけられる魅力がこの本にはある。

 さて、当日の質疑応答にもあったが、吉田さんの所説に対するいくつかの疑問うちの最大のものは次のとおり。
吉田さんは、ソウルをふくめた近世朝鮮社会における地域共同体の存在意義が日本などと比べるとかなり低い、と主張する。その根拠は、主に、住民の高い移動性とコミュニティ内における幅広い身分・階層の雑居性である。例えば、ソウルの「洞」という地域単位においても、そうした移動性と雑居性とが注目され、それにより、「洞」のもつ地縁的結合の弱さが強調される。
 たしかに、全住民を包括するような地縁的結合を見出すのは、そういう地域の場合、吉田さんの言うとおり、困難なのかもしれない。しかし、住民の職業や階層などによっては、ある程度強い地縁的結合を要する人々が、そこには部分的に存在した可能性がある。コルモクキルという、ソウルを訪ねた人ならおなじみの、細い路地を挟んで両側町的に展開する「洞」において、そこに雑居する様々な職業・階層の各々の実態にまで降りてみての、丁寧な分析が必要だろう。

 今年もできればソウルに行って、町あるきをやってみたい。黄鶴洞というところにあるホルモン横丁が気になっている。すぐ背後にロッテが建設した超高級マンション街区に押しつぶされそうになりながら頑張っているその横丁の歴史を知りたい。横丁で一番の古株だというホルモン屋にはもう6~7回通って、そこのオモニに少しは顔を覚えてもらった。聞き取りができたらいいな。
 20年史?30年史? その横丁自体がもっている歴史の長さについてはまだ知らないが、その横丁的空間=社会の系譜をさかのぼっていけば、何らかのかたちで、近世ソウルの街角へと到達するのではないだろうか。

 そうか・・・先日も酔った勢いで発案したけど、このブログを通じてご報告させてもらっている町あるき企画「江戸を縦貫する」の今年の番外編はソウルに行こうか。参加者の学生さん・社会人さん、いかが?

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