宣伝:『江戸の都市プランナー』
先々週に発売された、『江戸の都市プランナー』の宣伝です。
みなさん、買ってくださいね(笑)。お願いします。
出版社は、柏書房さん。税込で2310円です。
本書は、江戸時代末期の江戸の町人、熊井理左衛門という人物の伝記です。
熊井理左衛門は、もともと、江戸深川の町で、名主を務めていました。
名主というのは、当時江戸に1600個くらいあった町の代表であり、各町内の支配にあたる役職です。本来はひとつの町にひとりの名主が原則ですが、この頃の名主は、ひとりで数町から十数町の支配を担当していました。
人口50万の江戸の町方に、だいたい250人くらいの名主がいて、熊井理左衛門もその中のひとりでした。
ところが、この熊井理左衛門という人は、とてつもなく優秀な人で、次第次第と幕府から重用されていくことになり、全名主のトップリーダーとなって、江戸町方の行政の中心で辣腕をふるうことになります。
天保改革期以降では、理左衛門なくして江戸町方の行政は成り立たないといっても過言でないほどの、大きな存在となります。
しかし、安政4年、とうとう、そんな理左衛門が邪魔になった町奉行所の役人の陰謀によって理左衛門は・・・・というお話です。
理左衛門が活躍した世界、すなわち、個別の町を超えた広域的な江戸町方社会を対象とする政治・行政の世界は、制度上、武士身分の人々が中心となって動かす世界でした。そのため、歴史研究者の注目も、ほとんど、そうした武士身分の人々に集まります。たとえば、天保改革期であれば、老中水野忠邦や町奉行の鳥居耀蔵、遠山景元といった人々です。
そんなわけで、果たしていた役割のすごさにもかかわらず、町人である理左衛門のことを知る人は、ほとんどいません。
別の見方をすれば、そんな武士中心の制度のなかで、町人であるにもかかわらず、多くの仕事を次々に成し遂げていく理左衛門の力量は、けたはずれに大きかったといえます。
そういう熊井理左衛門のことを、たくさんの人に知ってもらいたくて、今回の本を書きました。また、多岐にわたる理左衛門の仕事をおいかけることで、江戸の社会の諸方面にふれることができるようにとも思って書きました。
熊井理左衛門という、“未発見”の歴史的重要人物のことを知り、同時に、江戸の社会状況も知る、というねらいの本です。
本書のなかに出てくるさまざまな事件や江戸の町の状況は、史料や歴史研究にもとづく、いわゆるノンフィクションです。
他方、理左衛門の心理描写が、それなりの量でもって挿入してあります。その部分は、歴史小説、フィクションです。
ノンフィクションとフィクションが混在して紛らわしいのではないか、と思われるかもしれませんが、読み進めていく上で、だいたいその区別はできるように書いたつもりです。
そんな余計なフィクションは要らない、という方は・・・・とりあえず本書を購入していただき(笑)、巻末にあげた参考文献のなかにある、私の書いた学術論文や研究書を読んでくださいませ。よろしくお願いします。
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