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2023年4月

2023年4月26日 (水)

江戸名所図会の春夏秋冬

 『江戸名所図会』の魅力のひとつは、その挿絵の中で表現される豊かな季節感である。『発見!江戸名所図会』第3回「江戸名所図会の春夏秋冬」では、四季それぞれの風物を描いた挿絵7枚を紹介した。

 春は「十軒店雛市」・「鎌倉町豊島屋酒店 白酒を商ふ図」。桃の節句、雛祭りに関係する挿絵2枚を選んでみた。

 夏は「両国橋」。有名な両国花火の情景を紹介した。玉屋と鍵屋、人気を集めたのはどちらの花火か。もしかすると絵の中に答えがあるかも。夏のもう1枚は「落合蛍」。蛍狩りの人々が楽しそうだ。

 秋は「道灌山 聴虫」・「小名木川 五本松」。虫の声に名月。しみじみと味わい深い。小名木川を進む船の乗客の中には、親しい友と会った帰りの著名人がいる。

 冬は「二軒茶屋 雪中遊宴之図」。雪の積もった庭を眺めながらの宴会の情景。有名高級料亭で豪遊する江戸の富裕層の姿が描かれている。

 この第3回は、個人的におすすめの回。

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2023年4月23日 (日)

本当に見えたの?八見橋

 「八見橋」というのは一石橋の別称であった。この一石橋の付近で、日本橋川と外堀と道三堀とが交差していたため、この橋からはそれらの水路に架けられた何本もの橋々を一挙に見渡すことができた。

 すなわち、日本橋川に架かる日本橋と江戸橋、外堀に架かる常盤橋と呉服橋と鍛冶橋、道三堀に架かる道三橋と銭瓶橋、以上の7本に一石橋自身を加えた8本の橋が見えるとして、一石橋は「八見橋」とも呼ばれたのである。

 しかし、本当に8本の橋が見えたのかどうか。これに疑問を持つ人も少なくない。特にもっとも離れた場所にある鍛冶橋については疑問視する人が多い。

 そこで『発見!江戸名所図会』第2回「本当に見えたの?八見橋」では、明治初期に作成された大縮尺の測量地図を利用して8本の橋が見えたかどうかを検証してみた。果たして鍛冶橋は見えたのか、見えなかったのか。他の橋はどうだったのか。

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2023年4月 9日 (日)

ようこそ江戸へ

『江戸名所図会』の冒頭に載せられた4枚の挿絵には、読者を江戸の町へと誘うため、ある面白い工夫が施されている。

その4枚のうち最初の絵は、江戸城の真上600メートル前後の上空に視点が置かれ、そこから江戸の市街地と江戸湾とを眺める構図をとっている。そして、2枚目以降、その視点は徐々に下降していく。2枚目は地上およそ200メートル、3枚目は3040メートル、そして4枚目は78メートル、といった具合である。これにより、『江戸名所図会』をめくる読者は、4枚の絵を順に見ることで、江戸のはるか上空から地面近くまで、だんだんと舞い降りていく感覚を味わうのである。

こうした工夫が施されていることを指摘したのは、『江戸名所図会』の研究書も書いている千葉正樹さんである。読者を江戸の町へ誘導する工夫には、上に書いたような視点の高度変化だけではなく、それぞれの絵の視角の動きや建物・人物の描写の変化も動員されていて、さらに効果的なものとなっている。

『発見!江戸名所図会』の第1回「ようこそ江戸へ」では、こうした工夫について千葉正樹さんが分かりやすく解説をしている。

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